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記事2001年2月13日 4号 (10面)
私学の年輪
東京私立中学高等学校協会副会長 世田谷学園中学校高等学校校長 山本 慧彊 先生
| 「優れた先見性と実行力」 東京私立中学高等学校協会会長 東京女子学院中学高等学校理事長・校長 酒井 A
山本慧彊先生の学園葬が執り行われるにあたり、東京私立中学高等学校協会加盟の四百二十校を代表して、謹んで先生のご霊位に対し、哀悼の意を捧げます。 山本先生、このような形でお別れの詞を申し述べなければならないとは思ってもみませんでした。 多くの方々に敬愛され、私共の柱であった先生を、突然失った強い衝撃と深い悲しみに打ちひしがれております。この悲しい現実を認めなければならないのでしょうか。 先生は、卓越した指導力、優れた先見性と実行力によって、世田谷学園のみならず、私立学校は勿論のこと、日本の教育のため、あの元気な美声で、理路整然とした語り口と、人を引き付ける人柄で、今後ともご活躍くださるものと信じておりました。 顧みますれば先生は、多感な青少年時代を世田谷中学校、高等学校で学ばれ、その後、駒澤大学では仏教学を専攻され、昭和三十一年四月に、母校の教諭として教鞭を執られ、昭和五十四年には教頭に、そして昭和五十七年に校長に就任され、永年にわたり文字どおり寝食を忘れての熱気溢れるご指導により、いまや世田谷学園は教育界の羨望の的であり、その名声は広く世界に鳴り響く存在となっております。 また、先生は、早くから国際理解教育に着目し、学園での国際交流を推進するとともに、カナダとの交換留学制度を導入するなど、生徒たちが真の国際人として成長していくように、豊かな人間性の育成に努められました。 さらに先生は、建学の精神である仏教精神を現代教育の場に生かし、―THINK&SHARE―の教育理念と、学園のモットーである「明日を見つめて、今をひたすらに」と「違いを認め合って、思いやりの心を」もとに教育内容の充実をはかられる等、創意工夫、率先垂範によるよりよい教育環境づくりに心血を注がれました。 先生は、このように四十五年の永きにわたり、学園の充実・発展をはかられる一方、昭和四十九年以来東京私立中学高等学校協会の役員を引き受けられ、その間庶務・会計部長、総務部長、平成八年より副会長をつとめ、要として東京の私立学校の振興に全力投球でご尽力くださいました。また、日本私立中学高等学校連合会常任理事・東京都私立学校教育振興会理事・東京都私立学校審議会委員・全国私立学校審議会連合会副会長などの要職を歴任されました。 中でも東京における公私連絡協議会委員として、公私一体となっての後期中等教育の諸問題についても、誠心誠意対処され、行政当局との連携をはかられる等、将来の東京の教育、日本の教育を見据えた広い視野で教育界においても中心的存在として活躍されました。私学振興に尽くされたご功績は誠に重かつ大であります。 あの若々しい頭脳と行動力、多くの人々を引き寄せる人間的な魅力を忘れることはできません。人の命には限りはあるとは申せ、かくも早く、幽明、境を異にすることになった今、只々人生のはかなさを感じるものであり、悲しみに堪えません。 しかしながら、先生の教育に対するあくなき情熱、そして真摯な言動は学園関係各位の方々のみならず、私たちの心にも深く刻みつけられ、生きつづけております。私共は偉大なる先生の教育に対するご遺志を継承する覚悟と決意を新たにしております。 山本先生、 山本慧彊先生、お名残は尽きません。 本当に長い間ありがとうございました。どうぞ、これからも東京の、日本の私立学校をお見守りつづけてください。 あらためて先生のご冥福を心からお祈り申しあげ、最後のお別れの言葉といたします。 (学園葬の弔辞から) 平成十三年一月三十日
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