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記事2003年4月3日 1885号 (4面) 
財団法人東京都私学財団発足記念私学代表座談会
私学振興へ大きく躍進
新支援団体 (財)東京都私立学校教育振興会と(社)東京都私学退職金社団統合
  財団法人東京都私立学校教育振興会と社団法人東京都私学退職金社団とが統合し、東京都私学財団が設立されるに当たり、都内の幼、小、中・高、専各までの私学四団体を代表する先生方にお集まりいただき、新財団設立の意義や役割などについてお話しいただいた。(編集部)


出席者敬称略順不同

酒井  A(東京都私学財団理事長 東京私立中学高等学校協会会長)
紙上参加平野 吉三(東京都私学財団運営理事 東京私立初等学校協会会長)
清水 博雅(東京都私学財団運営理事 東京都私立幼稚園連合会会長)
中込 三郎(東京都 私学財団運営理事東京都専修学校各種学校協会会長)
司会嘉悦  克(東京都私学財団理事長代理 東京私立中学高等学校協会副会長)


【私学財団発足の意義】

私学助成の配分も視野に
高校等の自己点検、評価も


司会 財団法人東京都私学財団が、財団法人東京都私立学校教育振興会と社団法人東京都私学退職金社団の統合ということで、本年四月一日から発足するわけですが、きょうは新しい財団の理事となられる各私学団体の先生方にお集まりいただき、設立の意義、役割、また今後の活動と展望などについてお話しいただきたいと思います。
 まず初代理事長に就任される酒井先生に、設立の意義、抱負等お話しいただきたいと思います。

酒井 退職金社団は昭和四十年から、振興会の方は昭和五十六年に発足した団体ですが、一つは退職金制度という内容であり、もう一方は教職員の研修および教育研究事業に対する助成、さらに貸付制度等々ということであったわけです。合併発足する東京都私学財団も先輩や諸先生方のお知恵を拝借して、それぞれの団体の仕事を継承していくわけですが、それに加えて、これからいろいろな事業が出てくると思います。例えば、私立学校に対する負担金(私学助成)制度や配分についても、行政が算定配分してくる現状で果たしていいのかということです。私はこの財団が取り組むべきではないかと思います。また、大学等では自己点検・評価ということが実施されることになりましたが、これも近々、高等学校等も実施が義務付けられると思われますので、この財団が受け持つことになるのではないでしょうか。その他、今後いろいろな問題が出現すると思いますが、それらに対して柔軟に対応していくような組織にしていかなければならないと思っています。

司会 中込先生、いかがでしょうか。

中込 私ども専修学校各種学校協会はどちらかといえば歴史が浅い団体ですから、振興会や退職金社団への加入率もそれほど高くなかった。ご承知の通り、経常費補助というのはわれわれ専各にはないので、すべて自己判断で行っていかなければならない。そういう意味でも新しくできる財団が私学のためになるような、校種を特定しない活動も必要ではないかなと思います。われわれが新しく私学財団をつくって東京都の私学のためにやるぞというスタートに切り替えていきたいと思います。


【私学支援団体としての役割】

教員養成、私学経営強化
教育環境を整備、発展へ


司会 私学四団体から選出される委員で「私学振興あり方検討委員会」が平成十年の八月九日に発足しました。この中で、われわれがまず目指したものは、都財政健全化ということで、東京都に協力するけれども、新しくできる団体は私学の振興ひいては東京の教育の充実のために貢献できる組織ということであったと思います。私学待望の支援団体としての役割について、酒井先生からお願いします。

酒井 教員の養成、同時に私立学校の経営強化、私立学校に来てくださる幼児・児童・生徒の教育環境を整えるということをより一層強固なものにして、発展させていくということが、私学団体としての役割の一つではないかと思います。
 いま、私学四団体それぞれが研究機関を持っていますが、これも近い将来には大同団結して、各校種が連携して、東京の教育をより一層伸展させるための研究機関を発足することもこの際考えてみる必要があるのではないでしょうか。

平野 私立の小学校は中学高校とは比べものにならないほど、数は少なく、最も集中している東京ですら五十一校に過ぎません。私学振興に関しても、中高の傘の下で大変お力添えをいただいていますが、小学校年齢児の最も柔軟な子供に対しては、教育環境を特に大切にしていかなければなりません。そういう視点から東京都私学財団が果たす役割は大きく、また、学校経営の基盤を安定充実させていく財団の役割も大変期待されるところです。

司会 清水先生、いかがですか。

清水 私学の振興推進に役立つ活動を大いにやっていただきたいと思います。
 特に退職金の制度は幼稚園にとっても幼稚園の教職員にとっても大変ありがたい。基金の運用という意味では非常に難しい時代ですけれども、退職金制度が維持できるようにやっていただきたいと思います。

酒井 統合の検討委員会の中で、退職資金制度にかかわる出資金は、制度発足当初から平成八年度までは会員と東京都の折半でしたが、平成九年度から引き上げ分は会員のみで負担しているため、会員の負担が過重になっていますので、できるだけ早く会員との負担割合が一対一にしていただけるよう、今後とも会員の皆さまのご協力のもとに各方面に働きかけ実現したいと存じます。私学は日本の公教育の一翼を担って、国の宝である子女の育成に関与していることも認めていただきたい。

司会 中込先生、いかがでしようか。

中込 専各の場合は助成が、酒井先生のおっしゃる負担金ですが、非常に少ないわけですから、大変無理な部分があります。東京で専門学校生が約二十万人、教職員も数万人と、数からいえば相当数いるわけですが、いろいろなところでわれわれがやりきれていない部分もあるので、新しい私学財団ではなんとか達成したいなと思っています。


【新組織の具体的な活動】

経営の安定、退職金融資事業充実
学びの環境を創る振興策を


司会 新しい組織では教育内容の充実・振興と同時に、それを遂行していく各私立学校の経営基盤の安定を図ることが大きな柱の一つではないかと思いますし、それに伴う保護者の教育費の負担の問題があります。また私立学校の財政的基盤の安定の一つの柱、制度として退職金制度があります。それ以外に何か、具体的なものがありますでしょうか。

酒井 経営の面からすれば学校法人は寄付行為で成立しているのですから、特に融資事業の充実が必要で、私学教育促進のための寄付金をいただき、長期無利子の制度ができればと考えています。

中込 そうですね。そのほかに、私学があるから東京の教育があるという認識では一致しているわけですから、新しい財団でも「私学があるから東京の教育があるんだ」という大きな声をもっと出していきたい。そういう強い姿勢を示していきたいと思いますね。

平野 戦後日本はどん底から這い上がるためにがむしゃらに働き、知識重視の教育に力を入れてきました。その結果、技術力や経済力は世界的に優位に立つ国となりましたが、経済に陰りが見えた今、目標を失った空虚さが国民の心の中に宿っているのではないでしょうか。人は尊い目標に向かってゆっくりと時間をかけ、いろいろなことを経験し、学ぶ楽しさや喜びを感じとることはとっても大事なことと思います。そういう学びの環境を創っていく振興策が今、もっとも望まれているのです。

清水 幼稚園としては、子供の教育も大事だけれど、親の教育もやっていかなければならないと思っているわけです。ですから私学財団が中心になって親に対する啓蒙運動、例えば子育ての大切さ、日本の伝統的躾のあり方といった講演会をやるとか、そういうことをやっていただきたい。
 今の若いお母さん方の中には、自分中心の考え方になってしまい、子育てを放棄している方もおられます。いわゆる家族の崩壊というか、幼稚園をやっているとそういうことをすごく感じますので、ぜひ全都的にそれを呼びかけていく必要があると思います。
 少子化対策についても、行政もいろいろな施策をやっているけれどもなかなか成果が上がっていない。これも私学が音頭を取っていくべきだと思います。
 そのほかに、食べ物をどう子供たちに食べさせていくかという食育も含めて、ぜひ啓蒙をやっていただきたい。それも都全体ではなく、例えば三多摩地区でやるとか江東三区でやるとか、都内をいくつかに分けて財団主催の啓蒙活動をやれたらいいかなと思います。

夢と希望と愛の教育
躾等の啓蒙、職業教育も重要


中込 社会も、人材を育成しようとはしないで、むしろ人材を消費する社会になってきているのではないかと思います。保護者にしても職業に対しての貴賎を持っている人がいる。どんな仕事でも働いていることに対する誇りを子供たちが感じるように、もっと職業についていろいろ教育をしなくてはいけない。やはり、夢と希望と愛を感じさせる教育が必要です。

酒井 総じて言えることは、人間ってなんだろうということを軽視しすぎているのではないかと思います。一人ひとりが他者とみんな違うから存在価値があるんだということを忘れかけています。それぞれがそれぞれの役割を果たすことによって社会が成り立っています。清水先生の若い母親に対する日本の伝統文化、子育て、躾等の啓蒙運動、中込先生の夢と希望と愛を感じさせる職業教育の普及活動の重要性は言うまでもありません。これらを一つ一つ実現に向けて取り組みたいと存じます。新しい財団が私立学校の経営基盤の安定化や振興を図る本来の目的が果たせるよう、会員の皆さまのご指導を期待しております。

私学の果たす役割を支援

司会 あり方検討委員会の後に統合に関する協議会がつくられましたが、その中で、まさにこれからの東京の教育をリードしていく中で、私学の果たす役割などを完全に支援できる体制をこの財団がつくっていかなきゃいけないということがありましたね。

中込 結局、他の府県は自分のところは独自にされていますが、実は目は東京に向いているんですね。ですから、東京が日本の教育全体をリードするという大きなスタンスを持っていきたいなと思います。

新法人は自律的に判断し事業推進
奨学金貸付制度の改善など


司会 最後に、新しい財団に対する期待を受けて新理事長として、酒井先生にまとめていただきたいと思います。

酒井 東京の私立幼稚園、小学校、中学校、高等学校、専修学校各種学校がそれぞれの建学の精神、教育理念を生かして、お互いに切磋琢磨による長い歴史と伝統のもと特色ある教育を行っています。今後も各校が特色ある教育を継承し、より向上する基盤を確立するためには、現存の事業に加え、(1)私学奨学金貸付制度の移管と改善(2)授業料軽減補助事業の改善(3)経常費補助等の将来的事業移管の研究(4)都民への私学情報の提供・発信(5)都民からの相談対応等を推進してまいります。新法人は自律的に判断し事業を推進できるよう裁量権を拡大し、主体性を確立いたします。
 ここにお集まりいただいた東京私学四団体をはじめ、学識経験者の理事の方々、事務局の皆さま、関係各方位のご協力のもと、目標に向かって邁進してまいります。今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い致します。

司会 ありがとうございました。


【私学財団のこれからの活動】

私学振興の基盤強化
私学への一元的サービス提供


 財団法人東京都私立学校教育振興会と社団法人東京都私学退職金社団が統合し、四月一日、財団法人東京都私学財団(酒井A理事長=東京女子学院理事長、東京都新宿区)として生まれ変わった。東京都における「監理団体改革」のもと、東京都内の私学教育振興にかかわる基盤を安定・強化するとともに、私学に対する一元的サービスを提供するため、事業および組織を統合することにした。
 東京都私学財団は東京都内の私立の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、高等専門学校、盲・ろう学校、養護学校、幼稚園、専修学校・各種学校の教育振興のため長期、低利な融資、退職金支給に必要な資金の交付、教職員に対する研修会の実施等の援助を行うとともに、都民の修学上の経済的負担を軽減するための融資および助成を行うことにより、私学教育の充実・振興を図っていく。
 私学財団の主要な事業は次の通り。
 教育振興資金融資事業、退職資金交付事業、老朽校舎改築促進利子補給事業、入学支度金貸付原資融資事業、私立高等学校等授業料軽減助成事業、私立専修学校教育設備費助成・専門課程研究用図書等助成事業、経営相談事業、研修事業、学校研究助成事業、公開講座、私学情報提供事業。
 役員は理事二十四人、監事三人、評議員二十六人などで構成される。基本財産は十一億千六百万円で、十五年度では四百億五千七百六十八万円予算措置されている。

座談会では東京都私学財団の役割や活動などについて話し合われた

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