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記事2004年7月3日 1939号 (3面) 
短期大学パイオニア (9) ―― 山梨学院短期大学
必修科目「社会体験講座」U
全学科一年次必修科目に
日本列島横断リレー
山梨学院短期大学(三神敬子学長)は食物栄養科、保育科、経営学科の三学科構成だが、全学科一年次の必修科目として日本列島を横断リレーで結ぶ「社会体験講座U」日本列島横断リレー〜―フォッサ・マグナを歩く〜を平成十四年度から実施している。
 ラテン語で「大きな溝」という意味を持つ「フォッサ・マグナ」、これは日本列島のちょうど中央あたりで日本海側から太平洋側にかけて横断する古い地層で、地質学的にも文化的にも日本を大きく東と西に分ける地帯である。山梨学院のある甲府盆地はその中間に位置し、北は新潟、南は静岡・湘南地方ともさまざまな面での交流が深かった。
 山梨学院では自分たちの位置する地域の歴史や文化、産業などを学生自身の目で確かめさせ、その土地の持つ教育力で学生を成長させようと日本列島横断リレーを企画・誕生させた。主体性や実践力の育成を目的とした社会体験学習を創立以来さまざまな方法で卒業要件として取り組んできたが、その経験から得た課題を踏まえ、さらに発展させた科目である。
 横断リレーは新潟県糸魚川と静岡県清水の双方から出発して山梨学院をゴールとする。コースは糸魚川沿いルートが、糸魚川―南小谷―白馬―大町―豊科―松本―下諏訪―富士見―長坂―韮崎―甲府の十区間、南からは富士川沿いに清水―富士川―富士宮―身延―鰍沢―甲府の五区間、合計で十五区間(各区間約二十`)あり、学生はこの区間のうち一つを選ぶ。
 実行は九月中旬から下旬だが、実行までには長い準備期間が要る。一年生は入学したばかりの四月にこの講座全体のオリエンテーションを受け、踏破するための体力トレーニング計画書を作成する。この期間中に専門的なウォーキングの訓練も行う。
 五月には自分が進むルート・区間を選択し、同じ区間を選んだ他の学生と学科を越えてチームを編成する。
 六月から七月にかけて各区間を進むための立ち寄り先など詳細な計画を立て、本番は一泊二日であるため宿泊先の手配をしたり、緊急時の救急法なども学ぶ。
 各チームは歩きながらカメラつき携帯電話を使って景色の画像を含む最新の情報を現場から本部に送信し、その情報・画像を使ってホームページを作り上げるため、情報の発信方法やホームページ作りの技術などについても学習する。鰍沢で吊(つ)り橋をわたるチームの様子や南部町では熟練の職人さんの指導を受けて名産竹かご作りに挑戦する姿などが携帯電話から送られ、それを本部がパソコンで受けるといった作業がウォーキング実行チームと本部の間で連携して行われる。これらをホームペーシにまとめていくプロジェクトもある。
 十月に体験学習レポートを作成。十一月の体験発表会で成果を語り合って講座は修了する。
 体験の内容は、博物館、郷土資料館、伝統工芸館、昆虫博物館、福祉施設、商業施設、工場の見学・調査、森林・海岸散策、牧場体験、ガラス細工、そば打ち、ジャム・チーズ作り体験、郷土料理調査、武田、上杉などの寺社仏閣訪問、清水次郎長調査、環境対策の聞き取りや特産品調査など多彩だ。
 この講座は学長が本部長となり、三学科長と担当教員七人、学生三十人が中心となって実行委員会をつくり、それを短大事務局や法人各部局が支援するという形で実施、全教員が区間担当として参加して現地調査を行うほか、地域団体や行政機関の協力も得て行われる。学生自身も一年次において自ら調査し、学ぶ内容を選択し、企画実施するという学習を体験することで自己管理・課題設定・問題解決などの能動的学習姿勢へ移行するという成果が確認されている。

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