こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2011年7月3日号二ュース >> VIEW

記事2011年7月3日 2209号 (2面) 
放射線問題で2回目の専門家ヒアリング
基準決定プロセス明確に 住民も参加し社会で目安″り必要

 文部科学省は六月十六日、同省内で、「福島県内で一定の放射線量が計測された学校等に通う児童生徒等の日常生活等に関する専門家ヒアリング」を開催した。
 二回目の今回は、渡邊明・福島大学副学長、神田玲子・独立行政法人放射線医学総合研究所放射線防護研究センター上席研究員、中川恵一・東京大学医学部附属病院放射線科准教授、明石要一・千葉大学教育学部教授の四人が意見発表し、同省幹部の質問に答えた。
 この中で渡邊副学長は、学習環境の保全には校庭等の土壌を削り取ることが有効なこと、今後、リスク管理、危機管理能力の育成、放射線に対するリテラシー教育などの教育体系の整備が必要なこと、また「基準以下」の評価では保護者らの安心につながらないため、学会協会を超えた科学委員会を設置し、統一した情報発信が必要なことなどを強調した。
 神田上席研究員は、安全かどうかの認識は個人に大きく依存するため、専門家は個人の判断を助ける情報を提供すること、特に科学的知見と規制上のルールを区別すること、線量基準(年間二〇マイクロシーベルト)に関して、意思決定プロセスが不透明な点などを指摘し、事態の回復期にはリスクコミュニケーションの基本は信頼関係で、うそをつかない、隠さない、逃げない、相手を信頼すること、科学的知見だけに判断の理由を求めすぎないこと、科学以外の判断要素についても説明することを提言した。
 中川准教授は、国民はもともと、全国平均で、年間一・五ミリシーベルトの自然被ばくと二・三ミリシーベルトの医療被ばくを受けていること、自然被ばくも地域によって差があること(岐阜県一・五、神奈川県〇・四など、神奈川県が低いのは関東ローム層が地中にあるため)、また日本は世界一の医療被ばく国で、世界中のCTスキャン(被ばく量一回六・九ミリシーベルト)の三分の二が日本にあること、広島、長崎の原爆のデータでは、一〇〇ミリシーベルト以上の被ばくでは発がん率が〇・五%上昇したが、一〇〇ミリシーベルト以下の被ばくでは生活習慣の差の方が発がんリスクに効いてくるため、誤差に埋没してしまい相関は分からないこと、そのため被ばく放射線の目安は住民も参加してバランスを考え社会が作るべきだと指摘した。明石教授は、被災地の子どもが午後、学校の屋内で遊べる空間を用意すること、土日や夏休みにはボランティアの手を借りて、キャンプや短期山村留学をすることなどを提案した。
記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞