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記事2012年10月13日 2252号 (1面) 
ストレスマネジメントなどを取り入れた実践的研修の充実を
文科省検討会議 教職員のメンタルヘルス問題で中間まとめ
精神疾患による休職者増受け
予防的な取り組みなど提言
 教員の精神疾患による休職者が二十年近く増加傾向にあることなどを受けて、その対策等を今年一月から検討していた、文部科学省の「教職員のメンタルヘルス対策検討会議」(座長=吉川武彦・清泉女学院大学長)は、十月三日、教職員のメンタルヘルスに関する現状や課題、メンタルヘルス不調の背景、予防的な取り組み、復帰支援策等を盛り込んだ「中間まとめ」を取りまとめた。

 公立学校のデータだが、精神疾患により休職している教員は平成四年度から二十一年度まで十七年連続で増加、二十二年度はわずかに減ったものの、九年前の十三年度と比較すると約二・二倍の高水準を保っている。
 公立学校の約九十二万人の教員のうち、精神疾患による休職者数は二十二年度で五千四百七人、全体に占める比率は〇・五九%。学校種別で見ると特に中学校教員で割合が高く、年代別ではベテランと呼ばれる四、五十代の割合が高い。若手教員でも新規採用教員(二十二年度で二万五千七百四十三人)のうち、条件付き採用期間中に病気を理由に離職した教員(百一人)の九割以上(九十一人)は精神疾患による離職という状況だ。
 教職員がメンタルヘルス面で不調を来す背景には▽教員は、対人援助職で終わりが見えにくく、目に見える成果を実感しづらい▽消耗する要因である事務的用務、保護者対応等が増えてきている▽教職員の職務は個人で抱え込みやすい性質があるため、教職員が一人で対応するケースが多くなる傾向がある▽教員は、同僚の教員に意見等を言いにくい▽管理職側にも教職員の健康に関する危機管理意識の欠如があり、頑張っている教員に頼り、勤務時間外の残業を気にかけないようなところがある▽市町村教育委員会(公立小・中学校等)では、県費負担教職員は市町村の職員であるにもかかわらず、都道府県の職員であるかのような意識があるため、健康管理面まで十分に対応できていない―などがあると指摘している。
 その上で、予防的な取り組みに関しては、@セルフケアの促進A管理職によるケアの充実B業務の縮減・効率化等C相談体制等の充実D良好な職場環境・雰囲気の醸成―が必要としている。
 このうちセルフケアの促進では、自分自身のストレスに気付き、それに対処する知識や方法を身に付けることが重要で、困難な場面を想定したグループワークやロールプレー演習、ストレスマネジメント等を取り入れた実践的な研修の実施、個人情報保護に配慮した上でのストレスチェックの活用、教職員の家族への健康相談窓口の周知等が必要と指摘。管理職による日常の状況把握と初期対応、優先度の低い業務は校長のリーダーシップの下、積極的にスクラップ・アンド・ビルドをすること、学校外の相談窓口だけではなく、仕事上の上司部下の関係ではない先輩職員等にさまざまな相談に応じる役割を持たせること―なども提言している。
 また、復職支援に関しては、病気休暇取得時、復職プログラム実施前、同実施中、同実施後、職場復帰後の各時点での対応上の留意点についても言及している。
  ◇
 別表の通り、私立学校でも教員のメンタルヘルス環境は公立学校と同様の側面があるが、今回の中間まとめは、多くの教育改革と同様に公立学校を念頭に置いたような内容で、中間まとめに添付されたデータも公立学校が中心となっている。
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