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記事2016年4月13日 2371号 (1面) 
急ぎ給付型奨学金の創設を
自民党の教育再生実行本部が第六次提言
格差克服等へ様々な施策 私学施設耐震化に集中支援も

自由民主党の教育再生実行本部(本部長=渡海紀三朗・衆議院議員、元文部科学大臣)は4月4日、格差克服のための教育、教育環境整備、高等教育、特別支援教育の各部会の第一次提言で構成する「第六次提言」をまとめ、同日、渡海本部長らが総理官邸に安倍総理を訪ね、提言を手渡した。提言では、基金を活用した給付型奨学金の創設や希望する教育を受けることを阻む制約の克服推進、地域活性化に即効性のある学校施設・設備の老朽化・耐震化対策の推進など5項目について、平成28年度補正予算編成も含め緊急に財源確保を講ずべきだなどとしている。同本部が中間的議論の段階で提言をまとめたのは、「情報化時代に求められる多様な個性が長所として肯定され活かされる教育」を検討中の政府の教育再生実行会議が5月に公表する提言案の審議を4月20日にもすることや、既に28年度補正予算案編成の議論が出てきていることから、それらの議論に同本部の提言を反映させるため。


自民党の第六次提言のうち、格差克服のための教育部会の提言では、貧困の連鎖を断ち切るため、教育における格差を克服して一人一人の環境の底上げを図ることが一億総活躍社会や地方創生の実現に向けて喫緊かつ重要な課題と指摘。当面5年間の施策ロードマップの提示が必要としている。  具体的には初等中等教育段階では、新規に義務教育段階の就学援助について、家計急変で私立学校に通うことが困難となった児童生徒等への補助制度の創設私立中学校生徒への授業料負担の軽減など公的支援制度の創設に取り組む(いずれも平成28年度中に具体的方策を決定)高校生等奨学給付金について低所得世帯の授業料以外の教育費負担軽減のため予算を拡充する方針(29年度に高校等就学支援金と併せて制度の検証を行い必要な措置を講ずる)。  また高等教育段階では、貧困家庭から大学等へ進学する道を閉ざさず、卒業後に多額の借金を背負わないよう給付型奨学金の創設を提言。その他、教育格差克服モデル都市での実践、エビデンスに基づく教育施策の推進、教育財源確保の必要性等を指摘している。  教育環境整備部会の提言では、総額で38兆円必要とも言われる公立学校施設の老朽化対策や健康問題にも関係するトイレの改修を長いスパンで進めるとともに、私立学校施設の耐震化を一刻も早く完了すべく、集中的な支援と、28年度までの時限措置の耐震改築補助制度の延長も必要としている。  高等教育部会の提言では、生産性向上による成長戦略に向けて日本のビジネススクール(グローバルトップ型、地域密着型、産業分野特化型)の特徴を伸ばす振興策の必要性や、ビジネススクールの教育体制では学部・研究科等と専門職大学院との連携等の促進を、ビジネススクールの評価に関しては学生や企業等の視点を取り入れるなど抜本的な改善を求めている。  特別支援教育部会の提言では、発達障害等の早期発見のための就学時健診マニュアルの見直し、高校における通級指導の制度化、不登校や日本語能力が課題の子供、特に優れた能力のある子供への教育体制の整備などを提言している。  このうち大学生等に向けた給付型奨学金に関しては、喫緊の課題として当面5年間は基金を造成して実施、その後恒久的な制度に切り替える案などが検討されている。  基金の規模など具体化については同本部内等で議論を深める予定。  厚生労働省の平成27年度補正予算では、児童養護施設等の退所者を対象に就職・進学費用を貸し付ける(一定条件を満たせば返還免除)時限措置があるが、同本部では年収300万円以下相当や相対的に貧困と言われる年収300万円以上400万円以下を念頭に所得以外の要素を加味するかなども検討していく方針。安倍総理もさまざまな方策が考えられるとしている。  馳浩文部科学大臣は、4月5日の記者会見で日本学生支援機構の奨学金で既に年収300万円未満までは無期限で返還猶予の措置があること、一定の要件を課しての返還免除型の方がモラルに沿っており、菅官房長官が指摘した給付型奨学金よりも無利子型奨学金の方が先という理念はその通り、と語っている。  また3月25日の政府の一億総活躍国民会議では低所得世帯の学生等に対する奨学金の一部返還免除などによる給付型奨学金の創設等を求めていた。5月に策定される政府の「ニッポン一億総活躍プラン」に具体策が盛り込まれる予定。

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