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記事2016年4月23日 2372号 (1面) 
私立大学等の振興に関する検討会議が初会合
夏までに論点洗い出し、整理
来年3月に取りまとめ国公私間の格差是正求める声も

文部科学省は4月13日、東京都内で「私立大学等の振興に関する検討会議」(座長=黒田壽二・金沢工業大学学園長・総長)の第1回会合を開いた。21人の委員の中から、小林雅之・東京大学総合教育研究センター教授と濱中義隆・国立教育政策研究所高等教育研究部総括研究官がそれぞれ私立大学等をめぐって検討すべき課題や振興策の在り方等について意見を発表、その後、委員で意見交換した。同会議は、少子化の進行など経営環境が厳しさを増す中で、私立大学、短期大学が健全な発展を遂げるためのガバナンスの強化・戦略的な財政支援・経営基盤の強化、地方創生の観点も踏まえた大学の在り方等をゼロベースで検討する。会議の冒頭、文科省の杉野剛・高等教育局私学部長は同会議に関して、今後、月に1、2回程度開催し、来年3月末までに最終取りまとめを行う予定で、会議では文科省からの説明を短縮し、委員による意見発表、それを踏まえての意見交換で今夏までに論点を洗い出して整理し、秋以降に具体的対応策等を検討する計画、論点ごとの作業グループ設置も検討したいと語った。  会議では、小林委員が「高等教育政策の課題 私立大学を中心に」と題し、濱中委員が「学生調査から見た私立大学の学生・教育」と題し意見発表した。このうち小林委員は、高等教育をめぐっては、現在、地域間格差、男女別格差、所得階層間格差があり、所得階層間格差は非常に大きく、複合的な要因による格差となっていること、地方では選択できる大学や学部が限られ、それを受けて大都市の私大が拡大、その一方で私立大学の公立大学への転換が起きていることなどを指摘、地域配置と並んで高等教育システム全体の整合性を検討する必要があるとした。また、エビデンスに基づいての格差(地域間・所得階層間、私学助成の在り方、学生への経済的支援の在り方)の是正、公費負担の在り方の再検討等が必要で、とりわけ市場化政策の検証が不可欠だと指摘した。  濱中委員は、私立大学の果たすべき役割を検討する上で学生への着目は不可欠とし、1990年以降の学生数の増加を担ってきた1975年以降設置の大学の学生には比較的低所得層出身者が多く、女子学生が多いこと、しかしそうした大学が、相対的に不利とされてきた層に進学機会を提供、アクティブラーニングの実施や教員と学生との関わり、授業方法の工夫等で歴史の古い大学と比べても充実していることなどを指摘。大学間の競争を促す上では機関補助よりも個人補助の比重を大きくする方が望ましいが、一律の個人補助では、機関により学生の負担能力が異なることから、公平な競争にならない可能性もあり、教育機会の地域配置について、国公立大学、短期大学との役割分担を含めて検討する必要性を指摘した。  意見交換では、国公立大学と私立大学間の授業料減免の格差是正を求める意見、所得の比較的低い世帯の高校生は比較的歴史の浅い私立大学に入学、一方、所得の高い世帯の高校生は国立大学に進学する傾向などを指摘して、(米国の私立大学で見られる)「高授業料・高奨学金」制度は国立大学こそ必要といった意見など、私立大学等の振興策の検討には、国公立大学との関係の整理が不可欠と指摘する意見が複数聞かれた。  また地方と都市部の大学の環境の違いを指摘する意見も複数聞かれ、家計状況からアルバイトが必要な学生はアルバイト先を見つけやすい都市部の大学を選択しがちなことなどを指摘する意見も聞かれた。  このほか、地方で女子教育を担い、若者の地元定着(進学、就職)率の高い私立短大の振興策や学生の状況に応じた給付型奨学金の実現を求める意見、現在、中央教育審議会の特別部会で大詰め段階の審議が続いている「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関」が200校を超える規模になる可能性を挙げて、既存の大学等とのすみ分けを考慮しての議論の必要性を指摘する意見も聞かれた。

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