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記事2016年5月23日 2375号 (1面) 
私立中学生への公的支援制度創設を
中高連が政府、国会議員らに要請
所得低い層にも公的支援、奨学金なし
私立学校施設耐震化支援も急務

私立小・中・高校が現在のように特色ある教育を多様に開花できたのは、昭和50年に国会で成立した私立学校振興助成法によるところが大きい。同法が法的根拠となって、私立学校に対する助成が制度化され、優秀な教員の確保や施設設備の充実が可能となり、各学校で独自の魅力ある教育がつくり上げられた。新しい教育実践への挑戦は今も続いている。


私立小・中・高校は都道府県(知事)の所管。そのため、私学助成金は都道府県から出されている。その都道府県助成の財源となっているのが文部科学省の「私立高等学校等経常費助成費等補助金」であり、総務省の「地方交付税による財源措置」。平成28年度の文科省の私立高等学校等経常費助成費補助金は約1023億円(前年度比約14億円増)、総務省の地方交付税による財源措置は5702億円(前年度比約55億円増)で、合計額は約6725億円(前年度比約69億円増)である。しかし地方交付税による財源措置は私学助成に使途を限定しているわけではない。県の道路建設といった事業に回されることもある。  そのため、国が積算した標準補助単価を下回る県もあり、特に私立中学校、私立小学校への私学助成はほとんどの県で国の単価を下回る状況だ。  こうした中で日本私立中学高等学校連合会(吉田晋会長、富士見丘中学高校長)が目下、会を挙げてその実現を目指しているのが私立中学校生徒への公的支援制度の創設。私立高校生に関しては既に就学支援金が設けられており、受験生に私立高校選択の機会を提供している。しかし私立中学生の家庭の一部に高校就学支援金では割り増し支給を受けられる比較的所得の低い層が存在するにもかかわらず、何の公的支援措置もなく、奨学金もない。平成25年度の公費支出額を公立中学と私立中学で比較すると3・6倍、額にして約76万円の開き(私立中学校に対する公費出額が少ない)がある。こうした極端な隔たりを改善するため、現在、同連合会が中心となって政府や国会関係に要望しているもので、与党・自由民主党の教育再生実行本部の第6次提言の中にも私立中学生に対する就学支援措置の創設が盛り込まれ、また政府の教育再生実行会議の第9次提言の中にも同様な措置の検討を求める記述が盛り込まれ、私立中学生に対する公的支援の必要性の認識が広がりつつある状況だ。  一方、平成28年度予算には、私立学校施設の耐震化等防災機能強化のために45億円も計上されている。平成27年度補正予算50億円と一緒に執行されるため、95億円の予算が計上された格好だ。内訳は耐震改築(建て替え)事業が56億円、耐震補強事業が27億円、その他耐震対策事業12億円(非構造部材等を対象にした事業や利子助成事業)。ただしこれらは私立大学等も対象となる。  このほか日本私立学校振興・共済事業団による長期低利融資もあるが、私立高等学校等の耐震化事業の国の補助率は基本的に3分の1。都道府県の上乗せ補助を想定しての補助率だが、県によっては全く支援がなく、厳しい状況(私立大学等の補助率は2分の1)の中で施設耐震化が進められている。  そうした中で発生したのが平成28年熊本地震。私立学校施設に甚大な被害をもたらし、生徒や学生、教員に死亡・負傷者も生じた。国の激甚災害の「本激」に指定されたため私立学校も復旧事業の対象となったが、公立学校への補助率が100%近いのに対して私立高校等に対する補助率は2分の1。先般、私学団体は補助率の引き上げを文部科学大臣等に要望、熊本地震に焦点を絞った平成28年度補正予算も成立したが、詳細はまだ決まってはいない。先の東日本大震災では補助率の積み増しが実現し、私立学校の復旧・復興の大きな原動力となっただけに今回の熊本地震でも手厚い支援が期待されているところだ。熊本地震の場合でも避難者は、行政の指定した避難所でなくても近くの学校に救済を求めてきており、実際、そうした私立学校でも避難者を積極的に支援、特に高校生がボランティアとして大きな力となった。それだけに国の耐震化予算の拡充等が求められているといえる。


昨年12月、私学3団体が開催した私学振興全国大会で私学助成の拡充等を与党・自民党議員に要請した

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