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記事2017年5月3日 2408号 (1面) 
経済財政 諮問会議 人材投資と文教分野の在り方議論
教育成果反映した 傾斜配分実施など課題に
松野文科相 地方私学小規模校の充実 重要テーマだと指摘

6月の「骨太の方針2017」の策定に向けて、政府の経済財政運営の基本方針等を話し合う経済財政諮問会議(議長=安倍晋三総理大臣)が4月25日、総理官邸で開かれ、「人材投資と文教分野の在り方」が議論された。議論の焦点となったのは、3月30日の同会議に続き、わが国の成長に不可欠な人材育成の成否を握る大学。具体的には大学へのアクセス機会の均等や教育の質の向上、ガバナンス改革、地方大学等が議論されたが、同会議議員の閣僚や民間企業経営者から、私学助成について教育の成果を反映した傾斜配分の実施など大学や大学行政の改革への注文が相次いだ。


会議では、初めに民間議員を代表して高橋進・株式会社日本総合研究所理事長が問題提起した。その中では、家庭の所得水準・地方自治体の財政力と大学進学率には相関が見られるとして、居住地や所得に関わらず高等教育へのアクセスが確保される制度整備の加速、第2子以降への教育費減免の効果的・効率的充実を求めたほか、私学助成については教育の成果(アウトカム指標)を反映した大胆な傾斜配分の実施、設置者(国公私立)の枠を超えた経営統合や再編が可能となる枠組みの整備、経営困難な大学の円滑な撤退としっかりと事業継承できる制度的枠組み等を求めた。  こうした提案に出席の松野博一・文部科学大臣は、イノベーション創出と人材育成の中核の高等教育については、(1)国公私立の枠を超えた連携・統合の可能性の検討、地方に必要な人材を育成するためのプラットフォームづくり、外部資金導入の大幅な増加など経営力の強化、改革が進まず学生確保ができない大学の円滑な撤退手続きの検討など高等教育システム改革、(2)産業界等と連携し、実践的教育を行う大学、社会人のニーズに応える教育研究を行う大学、オープンイノベーションを促進するための産学官共創体制の抜本的強化、新株予約券の取得拡大など大学等の財源の多様化の促進、(3)給付型奨学金の充実(低所得層への支援)、授業料減免の拡充、無利子奨学金の充実(低・中所得層への支援)の三つを一体的に進める重要性を訴えた。また小規模大学の多い地方では経営悪化で教育機会の確保が困難になる恐れがあるとして、特色ある「足腰の強い」大学づくりに向けた早急なシステム改革、東京23区内の大学の新増設抑制については、地方創生に加え教育政策の観点も含めた総合的な検討が必要と述べた。  山本幸三・まち・ひと・しごと創生担当大臣は、学生の過度な東京への集中は、地方大学の経営悪化、大学が撤退した地域の衰退が懸念されるとして、東京23区の大学の学部・学科の新増設を抑制(既存学部の改廃による学部・学科の新増設は可)、地方へのサテライトキャンパスの推進が必要だと強調した。  世耕弘成・経済産業大臣はIT企業以外でもIT人材のニーズが高まっていることから、ミドル層がIT・データ等のスキルを身に付けられるよう、民間事業者や大学等が提供する社会人向け教育訓練講座を認定する「第4次産業革命スキル習得講座認定制度(仮称)」の創設を含め、ニーズに合った生涯の学び直しを強力に推進する考えを表明。また、学校会計は分かりにくいとして、企業会計と同じ土俵にしてガバナンス改革や合併・撤退の促進に繋げていく必要性を訴えた。  塩崎恭久・厚生労働大臣は学長選挙規程の見直し、学長等による学部長の任命が重要だとした。  麻生太郎・副総理兼財務大臣は、意欲と能力のある若者の教育機会の均等確保は最も重要な課題としたが、高校卒業後から働き、納税している人たちの公平感を損なわないことも重要だと強調した。また、大学の質の見方についてきちんとした整理が必要だとした。  高橋・日本総研理事長は、教育改革にエビデンスベースのPDCAが欠如していたため、数値的目標を明確にして効果の高い政策を実行することが必要だとし、私学助成ではどの程度の割合を教育成果で配分するのか、経営のガバナンス強化では外部人材をどの程度入れるのかといった数値目標を掲げるよう松野文科相に要請した。また、私立高校無償化の問題を取り上げ、自治体で年収の上限が異なり(例えば東京都760万円、神奈川県は250万円)、教育行政サービスに格差が生じている問題について文科大臣の見解を質した。  新浪剛史・サントリーホールディング株式会社代表取締役社長は、地方大学が特色を出していくのであれば、旧帝大以外の国立大学は県立大学とすること、ガバナンスの一つとして学生に教授を評価させる仕組み等の検討を求めた。  こうした閣僚等からの意見に松野文科相は、大学のガバナンスの問題が大学改革に直結するという意識は持っているとして、学長を中心とした大学の経営意思決定の在り方についてはさらに突っ込んで提言していく考えを明らかにした。また、さまざまなアウトカムによって私学助成等を変更することに関しては、定員充足率や就職、研究等のアウトカムが低い大学は地方の小規模の大学となることから、地方私学小規模校の充実が(重要な)テーマになるとした。  


高校無償化の都道府県格差


菅官房長官が早期改善が必要と言及


高校無償化の格差問題については、首長の教育に対する思考など文科省だけで解決できない部分もあるため、総務省を含め総合的に議論を進める必要がある、と語ったが、菅義偉・官房長官は、「放っておくような問題ではない」と語り、早急な対応を求めた。石原伸晃・内閣府特命担当大臣は格差が大きいとして、引き続いて議論していくと語った。

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