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記事2018年3月13日 2436号 (1面) 
今後5年間の教育政策の方向性等を整理
第3期教育振興基本計画で答申
中央教育審議会 国民一人一人の「可能性」「チャンス」を最大化 
“私学振興は決定的に重要”

文部科学省の中央教育審議会(会長=北山禎介・三井住友銀行特別顧問)は3月8日、第3期教育振興基本計画についての答申を林芳正・文部科学大臣に提出した。同計画は今後5年間(2018〜2022年度)の教育政策の方向性や教育政策の目標、目標の進捗状況を把握するための測定指標および参考指標、目標を実現するために必要となる施策群を整理したもの。


答申は大きく分けて、第1部「我が国における今後の教育政策の方向性」と第2部「今後5年間の教育政策の目標と施策群」から構成されている。第1部では教育の普遍的な使命、教育をめぐる現状と課題、2030年以降の社会を展望した教育政策の重点事項、今後の教育政策に関する基本的な方針、今後の教育政策の遂行に当たって特に留意すべき視点をまとめている。  このうち教育をめぐる現状と課題では、初等中等教育段階における世界トップレベルの学力の維持や学校施設の耐震化の進展等の現状を報告、社会の現状や2030年以降の変化等を踏まえて、取り組むべき課題として、人口減少・高齢化、技術革新、グローバル化、子供の貧困、地域間格差、そのうち特に教育に関しては、地域や家庭の状況変化、教師の負担増、高等教育の質保証の必要性等を指摘している。そのうえで2030年以降の社会を展望した教育政策の重点事項として、「超スマート社会(Society5.0)」の実現に向けた技術革新が進展する中で人生100年時代を豊かに生きていくためには、「人づくり革命」、「生産性革命」の一環として、若年期の教育、生涯にわたる学習や能力の向上が必要だと指摘。教育を通じて生涯にわたる一人一人の「可能性」と「チャンス」を最大化することを今後の教育政策の中心に据え取り組んでいくとしている。  具体的には、(1)夢と志を持ち、可能性に挑戦するために必要となる力を育成すること、(2)社会の持続的な発展をけん引するための多様な力を育成すること、(3)生涯にわたり学び、活躍できる環境を整えること、(4)誰もが社会の担い手となるための学びのセーフティネットを構築すること、(5)教育政策推進のための基盤を整備することの5点を今後の教育政策に関する基本的な方針と定めている。この(5)の中には私立学校の振興も取り上げられており、「私立学校の振興は決定的に重要である」とし、また「私学助成の性格を踏まえた上で支援を行いつつ、私立学校の特色の発揮と質的充実に向けた支援およびメリハリのある配分を強化することが重要」などとしている。さらに私立大学に関しては、「学校法人のガバナンス、財政基盤の在り方および経営困難な状況への対応、私学助成を通じた自らの特色を生かした改革の促進をはじめ、私立大学等の振興に関する総合的な検討を実施し、社会の要請と期待に応えるため、私学助成を通じ多様な特色の発揮と質的充実に向けた取り組みや改革を進めるためのメリハリある資金配分等を進めていくことが求められる」としている。  また、今後の教育政策の遂行に当たって、特に留意すべき視点としては、(1)客観的な根拠を重視した教育政策の推進、(2)教育投資の在り方、(3)新時代の到来を見据えた次世代の教育の創造を指摘。そのうち、(1)に関しては客観的な根拠に基づく政策立案(EBPM)を推進する体制を文部科学省内に構築すること等、(2)に関しては、人材への投資の抜本的な拡充を行うため、「政策パッケージ」を着実に実施し、教育費負担を大幅に軽減すること等、(3)に関しては次世代の学校の在り方など、未来志向の研究開発を不断に推進すること等を行うとしている。  一方、第2部では、基本的な方針に従って、21の教育政策の目標を定めており、私立学校に関しては、公私の別や施設種を越えて幼児教育を推進する体制の構築、年収590万円未満世帯を対象とした私立高等学校等授業料の実質無償化(現行の高等学校等就学支援金の拡充)の実現、私立学校の教育研究基盤の強化を挙げており、具体的には公財政支援の充実と寄附金収入等多元的な資金調達のための環境の一層の整備、経営上の課題を抱える学校法人に係る制度的対応を検討、学校法人の財務情報等の積極的公開をさらに促すとしている。教育研究環境の整備の測定指標には、耐震化等の推進(早期の耐震化、天井等落下防止対策の完了)が盛り込まれている。このほか教育政策の目標としては、確かな学力の育成、グローバルに活躍する人材の育成、職業に必要な知識やスキルを生涯を通じて身に付けるための社会人の学び直し、ICT利活用のための基盤の整備等が挙げられている。

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