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記事2020年3月13日 2504号 (1面) 
著作権法改正案、国会提出
海賊版対策を強化
国民のネット利用等にも配慮

 政府(文部科学省)は3月10日、インターネット上の海賊版対策の強化を柱とする「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律案」を国会に提出した。昨年の通常国会に同名の法案の提出を予定していたが、その内容が報道されると、国民の日常的なインターネット利用が萎縮するとの懸念や、漫画家など海賊版被害の当事者から違法化の範囲が広すぎるとの声が上がり、国会提出が見送られた。その後、国民からの意見聴取、文化庁の有識者検討会での議論、与党からの提言等を考慮し、法案の見直し等を行っていた。


 同改正法案の要点は、インターネット海賊版対策の強化。具体的には、リーチサイト対策と侵害コンテンツのダウンロード違法化。


 リーチサイトとは、侵害コンテンツへのリンク情報等を集約したウェブサイトのことで、リーチサイトを運営する行為等を刑事罰の対象とする。


 またリーチサイト等において侵害コンテンツへのリンクを掲載する行為等を、著作権等を侵害する行為と見なし、民事上・刑事上の責任を問えるようにする。


 リンク提供者には、民事措置で差止請求、損害賠償請求を可能とするほか、刑事罰では3年以下の懲役・300万円以下の罰金(併科も可)を科す。サイト運営者・アプリ提供者には刑事罰で5年以下の懲役・500万円以下の罰金(併科も可)を科す。昨年2月時点の法案と比べ、サイト運営者・アプリ提供者に対する刑事罰を非親告罪から親告罪に変更、自ら直接的にサイト運営・アプリ提供を行っていない「プラットフォーム・サービス提供者」には今回の規制は及ばないなどの修正を行っている。


 一方、侵害コンテンツのダウンロード違法化に関しては、違法にアップロードされた著作物のダウンロード規制(私的使用でも違法とする)について、対象を音楽・映像から著作物全般(漫画・書籍・論文・コンピュータプログラムなど)に拡大。その際、国民の情報収集等を過度に萎縮させないよう、規制対象を違法にアップロードされたことを知りながらダウンロードする場合のみとし、また漫画の1コマ〜数コマなど軽微なものや、二次創作・パロディ、著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事業がある場合は規制対象外とする。特別な事情とは例えば詐欺集団の作成した詐欺マニュアルを防犯目的でダウンロードする行為などのこと。侵害コンテンツのダウンロードに関する刑事罰は、正規版が有償で提供されている著作物のダウンロードであること、反復・継続してダウンロードを行うことを要件としている。2年以下の懲役・200万円以下の罰金(併科も可)が科される。全て親告罪。


 これらの改正点とともに、同改正法案にはその他の改正事項も盛り込まれており、(1)写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大、(2)行政手続きに係る権利制限規定の整備、(3)著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入、(4)著作権侵害訴訟における証拠収集手続きの強化、(5)アクセスコントロールに関する保護の強化、(6)プログラムの著作物に係る登録制度の整備(プログラム登録特例法)を行う。施行期日は令和3年1月1日だが、リーチサイト対策などは今年10月1日。

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